【心理・視線誘導(ミスディレクション)の基礎】意識を誘導するためのポイントをマジシャンがちょっとだけ解説!

先日、ネットサーフィンしていたら気になる企画を発見しました。

それは、「アニメファンが選ぶ『一度は使ってみたいアニメ漫画の必殺技・能力 TOP20』」というもの。

「キャラペディア」というアニメやゲームのキャラクターに特化したサイトがあるのですが、そちらで行われたアンケート(ランキング結果)です。

 

そのランキングで、「黒子のバスケ」の主人公・黒子テツヤが使う『視線誘導(ミスディレクション)』が5位になっていました。

他の結果が知りたい方は、キャラペディアさんで確認してください。

 

ミスディレクションを使ってみたい人が多いというのは正直意外でした。驚きです。

まあ、ただのキャラ人気という可能性もありますが…

 

さて、ミスディレクションであれば私も多少なら使えます。

大したことないとは言っても、マジシャンの端くれですから当然と言えば当然ですけどね。

 

ミスディレクションですが、単純に意識を誘導したいだけなら案外簡単にできます。

今回は、マジシャンである私がそのポイントをちょっとだけ解説します!

マジックのネタバレなどを避けるため、そこまで凄いものは解説していないですが…

 

スポーツに応用したい場合は、【一番重要なのは自分の視線(目線)】と【参考動画2】の項目を見ると役に立つかもしれません。

パスする相手を誤認させるフェイントの効果を高めるのに使えるかと思います。

 

それでは、お楽しみください。

 

 

そもそも心理・視線誘導(ミスディレクション)とは?

まずは、ミスディレクションの簡単な説明から。

 

ミスディレクション(misdirection)は、mis(誤った)とdirection(導き)を合わせた言葉で、人の注意を誤った方向に導く技術のことを言います。

フェイントやミスリードに似たようなもので、マジシャンは秘密の動作を隠すためにこの技を使います。

 

ミスディレクションには種類があると言われています。

視覚などの感覚に直接訴えかけるフィジカルミスディレクション、先入観や思い込みを逆手に取るサイコロジカルミスディレクション、時間経過で記憶をあやふやにするタイムミスディレクション等々。

しかし、実際に行うミスディレクションは複数の要素を織り交ぜることが多く、きっぱり分けて考えることは非常に難しいです。

そのため、初心者の内は違いについてはあまり考えなくてよいと思います。

 

さて、それでは早速本題に移りたいと思います。

ミスディレクションをかける際のポイント

「人の注意を逸らす」とか「マジシャンが秘密の動作を隠すために使う」と書くと、「隠したい(見られたくない)ところから意識や視線をそらす技」と解釈すると思います。

それは間違いではないですが、ミスディレクションの本質は「隠すこと」ではなく、「相手の注意を誘導すること」です。

なので、演じる場合は「見てもらいたいところに注目させる技」と考えましょう。

その方が何かとうまくいきます。

 

何かに注目させたいなら、目立つ(インパクトある)ものかイメージしやすいものを使うのが手っ取り早い

ミスディレクションは、いかに”強く”相手の意識を引き付けられるかが重要になるため、好き嫌いや関心などの強度が極端なものを使うのが手っ取り早い方法になります。

何より複雑なことを考えないで済む分、初心者にとって扱いやすいというのもあります。

そのため、示す先は目立つ(インパクトある)ものやイメージしやすいものを用意しましょう。

 

例えば、マジックで秘密の動作を隠そうとする場合。

  1. 仕掛けがないか物を検めている時
  2. マジックの現象が起きている間

どちらが有効だと思いますか?

卓越したマジシャンであれば1の状況でも問題ないですが、通常であればインパクトのある2の状況の方がよりお客さんの視線を誤魔化せます。

 

もっと分かりやすい例を挙げてみましょう。

皆さんは、空を指さして「あっ!UFOだ!」と言って他人の目を逸らそうとした経験はありますか?

この古典的な方法もミスディレクションの一種です。

しかし、これで騙される人はそう多くないはずです。

何故だと思いますか?

 

皆さんはUFOと聞いてどんなものを想像するでしょうか?

こんな感じのアバウトな想像はできると思います。

しかし、具体的にどんなものかイメージできる人はいないでしょう。

この時点で極端なものという定義から外れます。

目立つかという点については、UFOが実際に飛来すればそのインパクトは凄まじいものがあります。

しかし、基本的には存在しないため「あるわけない」「どうせ飛行機か何かだろう」と考えてしまう人も多く、インパクト不足と言わざるを得ません。

どちらにしても中途半端ですよね。

これでは視線を引きつけるには弱過ぎます。

知的好奇心を刺激するワードのため一瞬なら目を逸らすことができるかもしれませんが、元々そういうものに興味がある人でもなければ”強烈に”とまではいかないでしょう。

 

それであれば、床を指差しながら「あっ!ゴキブリ!」という方がまだ有効です。

ゴキブリ(以下、G)は、誰もが知っている(見たことがある)ので、どんな生物か容易にイメージできるはずです。

したくはないけれど…

また、多くの人にとって嫌悪の対象であることからインパクトも十分です。

 

このように注意を向ける先の選択一つでかなり効果が変わってきます。

 

ただ、これだけだと解説の意味もないので、次は私がミスディレクションにおいて一番重要だと思っているポイントを解説していきます。

 

一番重要なのは自分の視線(目線)

私が考えているミスディレクションの最重要ポイントは、自分も視線を逸らす先を見る(集中する)ことです。

「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、人間は他人の視線に敏感な生き物です。

自分の視線(目線)にも注意しないと相手に勘付かれたり、隠したいものに興味を持たれたりすることがあります。

 

例えば、あなたの傍にスマホに集中している人がいて、その場にGが出現したとします。

Gいると伝えてあげたのに、一瞥するだけでまたスマホを見始めたらどう思いますか?

「何がそんなに面白いのだろう?」と多少なりとも気になるはずです。

ミスディレクションにおいても、これと同様のことが起こり得ます。

自分が隠したいものばかりに集中していると、そちらに相手の視線や興味が引きずられてしまうことがままあります。

 

フィンランドのJari K. Hietanen(ヤリ・ヒエタネン)教授の研究によれば、人は相手の目線に引きずられて同じ方向を向いてしまう習性があるとされています。

どんなに無関心を装っても、自分の目線が隠したいものに向いていたら相手もそっちを見る可能性が高いのです。

これはミスディレクションにおいて致命的です。

参考:Hietanen, J. K. (2002). Social attention orienting integrates visual information from head and body orientation. Psychological Research, 66(3), 174-179.

 

ミスディレクションの達人John Ramsay(ジョン・ラムゼイ)氏も、「もし観客に何かを見てもらいたいのなら、あなた自身がそこを見なさい。」という言葉を残しています。

それだけ自分の見るものが重要なのです。

 

さらに言えば、自分の目線をうまく活用することで、前述したイメージしやすさを補強することもできます。

例えば、先程のGの話であれば「床を指差しながら」という部分が結構重要になってきます。

Gと聞いて

  • カサカサと床を這っている姿
  • 羽根を使って飛んでいる姿

どちらを思い浮かべるでしょうか。

恐らくほとんどの方は前者でしょう。

空中を指差すよりも床に視線を向けることで、Gがいる説得力が増すわけです。

私はGが自分に向かって飛んできた経験があるので、どちらも容易に想像できてしまいますが…

 

もっと極端な話をすれば、「あっ!UFOだ!」と言っているのに地面を見ていたり、指差したところと別の場所を見ていたりしたらおかしいですよね?

効果激減です。

 

しかし、実際にやってみるとわかりますがこれが非常に難しいのです。

視線を向けたい先に集中しながらも隠すものには意識を向けないわけですからね。

さらには、相手に違和感を与えないようにするため、驚く表情など実際の反応と変わらない自然なリアクションまで求められます。

私も努力していますが、まだまだ完璧には程遠いです。

いきなり完璧にやれと言われても無茶だと思うので、初心者でも比較的簡単にできる方法を一つお教えします。

 

隠したいものをわざと雑に扱う

繰り返しになりますが、

自分も視線を逸らす先に集中する=隠したいものに集中しない

ということです。

しかし、集中しないよう下手に気を張るとぎこちなくなりがちです。

それならばいっその事、雑に扱ってしまいましょう。

雑に扱っているものが重要だとは普通考えません。

投げ捨てられたゴミに興味が湧かないようなものです。

やってみると分かりますが、下手に演技するよりも気にしてない素振りに見えます。

 

しかし、これは自然にそうなるというだけであって、自分で意図して意識(目線)を変えられているわけではありません。

あくまでも初心者向けの手段と考えて、意図的に集中する先を操れるように練習を重ねましょう。

 

さて、理論ばかりでは伝わりにくいかと思うので、参考動画も紹介していきます。

 

参考動画1

まず最初はマジック。

 

 

この男性は、イギリス出身の心理学者であるRichard Wiseman(リチャード・ワイズマン)氏です。

元々プロマジシャンとして活動していました。

その経験の中で人間の心理に強い関心を持ち、心理学の博士号を取得。

後に、ハートフォードシャー大学で研究室を持つまでに至った方です。

氏の動画は他のものも面白いので、時間があったらご覧になってみてください。

 

さて、上の動画を見て気付いたでしょうか?

前述のポイントを完璧に熟していることに。

 

“アシスタント”とそれの行き来する”ドア”が注目させたくない(隠したい)もの。

“布”と”ボール”が注目させたいものになります。

ドアを開け放ち、閉めることもなく一直線に布に向かって行きます。

どう見ても氏の関心は 布>ドア になっています。

視線もカメラ目線になるところを除けば、ほぼ布かボールを見ているのが分かると思います。

 

小さな赤いボールを出すことにもちゃんと意味があります。

一度、赤いボールを出現させることで「次は何が出てくるだろう?」と、布により注目することになります。

さらに、このボールとの対比で、黄色いボールのインパクトが増しています。

 

参考動画2

続いてはスポーツのフェイント。

NBAで活躍したバスケットボール選手Jason Williams(ジェイソン・ウィリアムス)氏のエルボーパスの映像です。

 

ここ注目してもらいたいポイントは「顔や体の向き」です。

スポーツは体が大きく動くため、目線だけでは目立ちにくく効果が弱まってしまいます。

そのため、目線だけでなく、顔や体の向きも使って自分の意識を向けている先を示しましょう。

足りない部分を補うわけです。

その点に注目しながら動画をご覧になってみてください。

 

 

見事なプレーですが、もはやチームメイトですら反応できていない(笑)

ただ、見ずとも正確に打ったり投げたりできないといけないので相当な修練が必要になるでしょう。

頑張ってください!

 

参考動画3

これ以上の解説は初心者向きではなくなる(難しくなる)上に、明かしたら不味い領域までペラペラと語りそうなので止めておきます。

さらに、マジックの種明かしも無駄に重ねそうですし…

 

その代わりと言ってはなんですが、

ミスディレクションをうまく使うと、どれ程凄いことになるかが分かる動画があるので紹介します。

人間の意識が如何にアバウトなものかご覧ください。

 

ミスディレクションを巧みに使うApollo Robbins(アポロ・ロビンズ)氏の動画です。

ロビンズ氏は「世界最高のスリ師」なんて言われています。

 

初めの半分くらいは演説です。

ミスディレクションの実演だけを見たい方は、4分半くらい飛ばしてご覧ください。

※日本語字幕が用意されているので、再生開始時に設定しましょう。

 

 

これを見ると、人間の注意力、認知能力が如何に欠点だらけかを痛感します。

私も、彼のようにミスディレクションを使いこなせるようになりたいです。

そうすれば、さらに面白いマジックを提供できるようになれそうです。

 

というわけで、今回は心理・視線誘導のテクニック「ミスディレクション」の話でした。

かなり抑えて書いたので、物足りなさを感じたかもしれませんが許してください(汗)

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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